大判例

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福岡高等裁判所 昭和28年(う)576号・昭28年(う)575号 判決

記録につき調査するのに、本件追起訴状(昭和二十七年十二月二十三日附)によれば、「被告人は昭和二十七年十月二十九日頃福岡市二見町福岡盲学校作法室に於て佐野次男所有にかかる紺サージ上衣一枚外衣類一点及び現金千七百円余りを窃取した外別紙犯罪表の通り窃盗を為したものである」と記載され、尚右の別紙犯罪表には八十二回に亘る窃盗の事実につきその日時場所被害物件並びにその価格を項目別に列記してあるので、結局検察官は右追起訴状により八十三回に亘る窃盗の犯罪事実につき公訴を提起したものと認められ、而も右各犯罪事実はその日時場所被害者等を異にしている点等に鑑み併合罪の関係にある各個独立の犯罪として起訴せられたものと解するのが相当である。

然るに右の公訴事中、被告人が昭和二十七年十月二十六日飯塚市多賀町白川彦太郎方において国民服上下一着外雑品二点白米等価格合計一万六千円位相当を窃取した事実(前掲犯罪表番号二八の項)については、原審第二回公判廷において検察官より「誤記だから全部除去する」ことを右犯罪表中他の部分の訂正と共に許容せられたい旨申立があり、弁護人も右訂正に異議なく裁判所もこれを許容した旨同公判調書に記載され、その後原審において右除去の措置をとられた犯罪事実につき何等審理及び判決を為した事跡が認められないこと、正に所論の通りである。

そこで、考えて見るのに、凡そ、公訴事実として起訴された併合罪の関係にある数個の犯罪事実のうち、一個又は数個の犯罪事実をその公訴から取除くには、単なる起訴状の訂正又は訴因の撤回等の手続によることができないものであつて、必ず公訴取消の手続によることを要するものと解すべきところ(昭和二十七年四月二十四日東京高等裁判所第七刑事部判決参照)、刑事訴訟規則第百六十八条の規定によれば公訴の取消はその理由を記載した書面でこれをしなければならないことになつているのに、本件において左様な書面が提出された事跡は記録上全く認め難いから、前述の様な検察官からの除去の申立及び裁判所の許可にも拘らず、前記犯罪表中番号二八の窃盗の犯罪事実は依然審判の請求を受けた対象として原審に係属していたものと言うべく、従つて原審においては該事実についても審判をしなければならなかつた筋合である。然るに、原審において右事実につき何等の判決もしていないこと前段に述べた通りであるから、結局原審は審判の請求を受けた事件につき判決をしなかつた違法があるものと言うべく、論旨は理由がある。

(後略)

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